私が彼を殺した

ISBN:4062733854
とりあえず読了。とりあえず、てのはもう一度読む予定だからです。ぶっちゃけまだ犯人が誰なのか確信を持ってません。終盤の描写がミステリとしてフェアであればあの人しかいないような気もしますが、どうしても勢いでガーッと行ってしまったのでそれも勘違いの可能性があるのです。
どちらかが彼女を殺した」(id:ton-boo:20040523#p1)よりも、個人的には数段面白かったですよ……。何が違うかというと叙述トリック(と言ってよいかどうか厳密には微妙ですが)なわけです。容疑者3人の1人称で、章ごとに語り手が変わる。当然、犯行の瞬間の描写は省略されているわけですが、そうはいっても最後のページまでには加賀刑事とほぼ同じだけの情報が読者に与えられるわけで、その点アンフェアではないと思います。
というか当事者3人の視点で書いて、よくここまでどんでん返しを用意できるものだと感嘆しますよ本当に。
どちらかが彼女を殺した」については「トリック等にひねりがない」と書きました。正直その点で多少の物足りなさがありましたが、今回は事件そのものではなく叙述のほうで十分に楽しませてもらいました。
さて、巻末の袋とじ「推理の手引き」も読んだところで、改めて最初から読み返します。本来の推理小説の醍醐味「あなたが、犯人です」というシーンを意図的に省きながらもここまで読ませる作品というのは凄い。