武@オリジナルハイヴ

昨日の日記エントリに対してレスポンス頂きました。
id:straizo:20060319#1142714487
TBへの反応ありがとうございます。>straizoさん、USA3さん


内容が内容なのでネタバレ三昧です。いちいちマスクはしないことを先におことわりしておくことにします。
さて、「もし最終局面で武と冥夜の立場が逆だったら?」というIFの世界で、武がどういうことを考えるか想像するという思考実験の話です。


世界が閉じている、ということは夕呼から告げられていました。世界自体が武の死に伴ってループしてしまい、それまでに武が為したことは基本的に全て「なかったこと」として巻き戻されてしまう*1、というように私は理解しています。おそらく武もそうですし、straizoさんともこの点で認識の齟齬はないでしょう。
つまり、冥夜が上位存在を武ごと撃ち抜こうと、解決にはなりません。ただ、AL世界を巻き込んでやり直しになるだけです*2


ですが、そのやり直しが致命的かというと、必ずしもそうではありません。実際、武は今までに何回もループしていたであろう、ということは夕呼から告げられています。
その一方で、今までのループ(=アンリミの各ヒロインルート)とは確実に意味合いが違うのも間違いありません。私が思いつく主なポイントは以下の通りです。

  • 今回の武は肉体的にも精神的にも成長し、BETAについての新しい知識も増え、上位存在をあと一歩まで追いつめた。次回があったとして、同じところまでたどり着ける保証などあるわけもないし、なにより、武がステータス(能力・記憶)を引き継ぐかどうかすら定かではない。個人的には、id:ton-boo:20060304#p3で書いたとおり、死んでループしたらステータス引き継ぎは「なし」なんだろうと思っています。
  • 武は今回、今までのループには存在しなかった様々な経験をしてしまい、その記憶を虚数世界にばらまいてしまった。その因果情報が、各並行世界にどのような影響を及ぼすのかわからないという不確定要素ができた。
  • 既に因果のパイプを繋いでしまい、そのために最悪の場合50億人の命がなくなりかねない別世界がある。AL世界をループさせてもなおその世界を修復できるのかどうか、確かなことはわからない。

こういったリスクがあるから、武は「ループするから次がある、などとは考えない」と覚悟を決めたと思うのです。


一方で、武が生け捕りにされた場合、ループせずに「様々な情報を得た上位存在が健在のまま桜花作戦は失敗」という結果だけが残ります。さらに言えば、武が死ぬ前に、先にBETAの手によって「武を因果導体とした原因」を消滅させられたら、AL世界も破滅、その影響を受けたEX世界も修復不可ということになりかねません。


この2つの状態を秤にかければ、たとえ幾ばくかのリスクがあろうと、前者(自分が死んで世界ごとやり直し)の方が後者よりマシなのではないか。
付け加えるならば、もし万が一、自分に世界をループさせる力がなくなっていたとしても、上位存在を叩いておけば少なくともAL世界はいくらかでも滅亡から遠ざかる。


こういう判断を武はするのではないか、と思ったわけです。
などといいつつ、これは希望的観測であって、10章の例のグダグダ武なら無理かもしれない……とも思うのですが。


以上、昨日の日記エントリにいただいたコメントに対する私の見解でした。

10章における武の成長

親しい人の死を容認する(死地に送り込む、目前の相手を助けずに見過ごす、など)のと、親しい人に直接手を下すのでは、心理的プレッシャーはずっと後者の方が重いでしょう。
そして、あれだけ過酷な運命が続いたように見えるオルタでも、私が記憶する限りでは、後者が求められたのは最終局面の武だけだと思います。そういう意味では、武の成長をはかる物差しとしては非常に高いハードルだと思う。


それを踏まえても、やはり最後のグダグダは致命的で、夕呼や厳しいプレイヤーには愛想尽かされてもやむを得ないレベルだというのは私も思いますね。私自身は、その点だけで作品全体を否定する気にはなりませんが、「許容範囲なのか」と問われると正直言葉に詰まります。こんな私は少数派なのだろうかどうだろうか。


ついでなので個人的妄想を広げてみます。親しい人に直接手を下さなければならない、という局面でのみんなの行動を想像してみる。

躊躇せずに実行してみせる組

夕呼、遙。
夕呼は言わずもがなですかね。霞のリーディング能力をもってしても、AL夕呼が内心で「親しい人」というカテゴライズをしている場面に当たったことはないようです。桜花作戦決行時のムービーをみれば、AL夕呼のなかでもまりもは特に親しい人であったのは疑いないところだと思いますが、相当強烈に割り切っていたのだと思います。
横浜基地にBETAを放ったこと、脳髄状態の純夏に生物としての死を与えたことなど、自ら手を汚す覚悟もバッチリ。彼女なら、まりもに直接手を下す必要があると判断されれば、間違いなく実行に移すでしょう。
遙については、宗像をして「水月より数段上」と言わしめる芯の強さがキーポイント。君望において要所要所でみせた印象からしても、こういう極限状況でこそ強さを発揮するのが彼女、という気がする。例えば相手が水月だったりした場合、遙が手を下す側であれ下される側であれ、水月が少しでも躊躇いを見せたら叱咤激励しそうな気さえする。

僅かに躊躇いを見せたあとに実行する組

みちる、水月、冥夜、月詠、柏木、まりも。
ここまでが、ミッションに徹することのできる組。本当は、武にここのレベルにいてほしかった。

最終的には実行するかもしれないが大いに躊躇う組

委員長、彩峰、たま、美琴、茜。何だか知らんが武もこのレベルだったらしい。全くもう……。
彼女らはまだ成長途上だと思います。

判断基準が少なくてよくわからない組

宗像、風間、神代、巴、戎、悠陽。
悠陽を除けば実戦経験をそれなりに踏んでいるわけで、「僅かに躊躇いを見せたあとに実行する組」のような気がします。が、人となりを見られる場面が少ないこともあって、よくわかりません。

もともと軍人じゃない組

純夏、霞。
運命に痛めつけられてきた彼女たちではありますが、自分の手を汚すなどというシチュエーションとは無縁だったはず。
この2人にそれを求めるのは間違い。

「最終シーンでの主人公の信用されなさっぷり」について

思うのですが、ヒロイン達は、自分が犠牲になったときに「武が立ち止まらないように」という理由で、言い換えれば武の強さを疑って、タケルが結果を出せなくなるのを恐れ、現実を隠していたのではないでしょう。
根っこにあるのは「武が心を痛めないように」、言い換えれば武の優しさに負担をかけないように、という気遣いだ……というのが私の見解です。タケルが結果を出せるかどうかではなく、内面に負担がかかるかどうかだけを問題視している。ぶっちゃけ、これは武のほうの問題ではなく、ヒロイン達のほうが残していた甘さであり、人間らしさだと思います。

「――壬姫さんだって……わかるでしょ、タケルの優しさ……」
「――タケルを……迷わせちゃいけない」
「――ボク達が……タケルの脚を引っ張っちゃいけないんだよ……!!」
「――タケルは強い人だけど……本当はもの凄く辛いと思うんだ」
「大切な人たちを……目の前で奪われ……」
「大切な人たちを失う可能性を知りながら……自分の判断で立ち去らなきゃいけなかったんだ……」
「それはボク達も辛かったことだけど……その場に居合わせなかった分……タケルよりは楽だったはずなんだ」

ついでにいうと、美琴とたまは、冥夜に対しても同じように「気を遣っている」場面があります。彼女らにとって、こういった気遣いは、相手が誰であろうとデフォルトなのではないですかね。

AL世界のその後について色々

結局武がなしえたことがAL世界の救済ではなく延命に過ぎないことは夕呼が言っています。
上位存在を失い、対処能力を喪失したBETAが相手で、かつ各ハイヴのデータがある現状はかなり人類にとって有利な条件。その代わり、人類はかなりの戦力を桜花作戦で失っているので、この機にどこまでたたみかけられるかどうかが不明ですし、一方で、BETAがいつまでピンチを放置しておくかも定かではありません。
例えば、ハイヴ・ネットワーク(勝手に命名)の中に、オリジナルハイヴのバックアップのシステム(新たな上位存在をたてる仕組み)があった場合。このケースはかなり厳しい。現存するハイヴのうち、どこが新たなオリジナルハイヴとなったのかの特定からはじめなければならない。人類の敗色濃厚なケースですが、諸々考えると(←考えたことを書くのがめんどくさい)この可能性は薄そうです。
もう1つ考えられるのは、新たな上位存在が送り込まれる可能性。宇宙におけるBETAの無節操な増えっぷり*3から、創造主は実は相当なDQNなのではないかとか、既に創造主は滅亡していてBETAを送り出す仕組みだけが延々と稼働中なのではないか、と言った推測がなされていたりもします。そういった状況をみると、「地球の上位存在が消滅されたことに対する対処」として新たな上位存在が送り込まれる可能性以上に、地球の現状とは関係なく数押しで乱発されている上位存在が再度地球に到着する可能性も考慮する必要があるように思います。いずれにしても、いつか必ず次のオリジナルハイヴが発生するでしょう。
ただ、この場合、初期のハイヴは小規模であることが効いてきます。落着直後なら、戦術レベルで制圧することができるかもしれません。ただしそのためには新たなオリジナルハイヴを戦場とすることが必要ですが、既存ハイヴが多数残っていてはそれもままならない可能性があります。そうした意味でも、既存ハイヴに対してたたみかけるのは急務だと言えるでしょう。
ところで、新たに発生するであろうオリジナルハイヴを叩けたとしても、所詮いたちごっこです。最終的には停戦協定を結ぶしかありませんし、そのためには意思疎通が必須です。やはりここは夕呼にもうひとがんばりしてもらうしかないのではないでしょうか。
00ユニット作成のノウハウは夕呼が押さえています。BETAに対してかなり精密なリーディングができることも証明しました。
問題はODL浄化が反応炉に依存していたこと、純夏のような特殊な経験を持ったもの以外でどこまで00ユニット素体として適合するかが不明なこと。
前者については、簡易型の浄化装置は完成していたのですから、それの改良を進めて実用化してほしいものです。
素体適合については……人体実験か……。


まったく話が変わりますが、Final Episodeで霞がEX世界に来てしまっている件。
上に述べた改良にはもう霞の手を借りなくても大丈夫なところまで来ているかどうかが気になりますが、大丈夫だということにしましょう。
AL世界では、桜花作戦の当事者ではありませんが、茜が武から話を聞いているに違いない。茜自身は、「誰からその話を聞いたのか」は忘れるかもしれませんが、A-01の武以外の5人の活躍は、誇らしく語り継いでいくものと思います。
歩く機密である霞は、桜花作戦終了後もその立場が変わったわけではありません。純夏の脳髄がなくなり、00ユニットとして生まれ変わった純夏も停止し、さらにもし夕呼が00ユニット開発のために霞の能力を必要としなくなったのであれば、AL世界では今まで以上に居場所がないことになります。武について行くことができなかったとしたら、AL世界では下手すると軟禁に近い状態となっていたかもしれません。
そんなことを考えると、多少ご都合主義の香りが漂おうと、霞がEX世界にこられて良かった……と思います。
霞はEX世界で感極まって涙していますが、役割を失ったAL世界での自分の処遇を覚悟したあとに、自分を「駒」でなく「人」として扱ってくれた武や純夏の元に戻ってこられたからだ、と思うのです。
大前提が崩れて、夕呼がまだ霞を必要としていたのにEX世界に来てしまった……とかだと……大変なことになるわけですが……
自分の使命・役割をきっちり自覚していた霞が「ありがとう」と言っているのですから、問題は片づいているのだ、ということで納得することにします。


うまくまとまっておらずチラシの裏風味ですが、とりあえず書きたかったのはこんなところです。

*1:記憶の一部は虚数世界に散らばるという形で残るので、完全になかったことにはならない……という微妙な設定ですが

*2:実際には00ユニット純夏の思いが遂げられた時点で武は解放されているはずですが、straizoさんも書いているとおり武自身はそれを知りません

*3:やっぱり10の37乗は設定として無茶だろう……